メンバー ()内は所属
清水瞳美 (委員、慶大)
佐藤知春 (委員、東大)
佐藤華子 (委員、早大)
中村颯太 (秋草)
垂水文弥 (東大、群青、門)
まずはメンバーからテーマを募ります。皆さん多くのテーマを出してくださいました。 投票の結果「家の中にて」と「好きな場所」に決定。各々で句作を開始します。
句が出揃ったところで zoom に集合し、句の順番決めとタイトル決めを行います。 順番決めで議論となったのは主に以下の 3 点。
「無季の句をどこに置くか」 これについては、無季の句は春の句の中に置くことで自然にその「流れ」でよんでもらえる、という垂水さんの意見を取り入れました。連作ならではの無季の句の使い方です。
「春の句が多い中どう起伏をつけるか」 一句を除いて全て春の句であるため、連作としての「流れ」を作るのに苦戦しました。初春、仲春、晩春という時間経過はもちろん、場面の転換やストーリー性のようなものを作りたいという話になりました。
「夏の句が一句だけあるがどこに置くか」 偶然にも春の句が多く出揃いましたが、夏の句を最後に一句だけ持ってくることで夏から春への移り変わりを描いて締めたいとメンバーで意見が一致しました。実は秋の句を一句華子さんから提出頂いていたのですが、夏の句と秋の句を一句ずつ最後に置くとバランスが悪いということで、心苦しくはありましたが別の春の句に差し替えていただきました。
この他にも同じ季語を使った句を別のものに差し替えたり、似た形式の句を話して配置したりと調整を加えました。
続いてタイトル決め。連作の雰囲気を象徴する言葉を探しました。「夜半の春コンセントみな満たされて」の「満たされて」も有力な候補でしたが、より具体性があるといいという知春さんの意見をもとに「寝転んでいる春昼の壁が好き」から、「寝転んでいる」をタイトルとしました。
鑑賞会では A チームの方々から以下のようなコメントをいただきました。
(東郷寿日太)12 から 17 の句において温度や力の流れが目まぐるしく変化しているのが良い。卒業式や受験といったイベントの句の間に日常を描いた句が挟まれていることで日常のゆとりを感じる。
(西野結子)最初の句が「大学」から始まることで続いてきた普通の生活、という感じがとれる。 最後の「海月飼う」でこれからその生活が続くことをなんとなく意識させる。
(南幸佑)高校生〜大学生の春といううっすらとした主人公像が浮かび上がる。タイトルが連作のゆったりとした雰囲気をよく捉えている。最後の句のみ夏の句なのは少し寸止まり感がある。
(森田雪虚)サウンドオブミュージックみたい。全体的に海の雰囲気が漂う中で、「カンバスの」 の句の山が効いている。
(岸快晴)全体的に似た雰囲気でまとまっている。「目覚まし」の句の呆れられるまでという擬人化が面白い。
主に春の句でまとめ雰囲気の近い句の多い中、句の流れで起伏を作った点を評価いただきました。特に初め方と終わり方に関しては、A チームの丁寧な鑑賞のお陰でさらに作品としての魅力が深まりました。
B チームはテーマを「家の中にて」「好きな場所」にしたお陰で、各々の日常を切り取ったかのような統一感のある句が出揃いました。これを連作として一つの作品にする際に、やはり「流 れ」というものが重要なポイントになったと感じます。通底するものを持ちつつ起伏や変化をつけていくというこのバランス感覚が連作においては必須となってきます。これを今回チームで行なってみて、その難しさや面白さを改めて感じました。チームで話し合い、自分の句や相手 の句を削ったり足したりしながら、一つの作品に練り上げていく。その過程は貴重な体験となりました。
最後にまず言えるのは「チーム連作は大変!!」ということ。今回は五人一組となって取り組みましたが、それぞれができの良い句を五句ずつ提出しても連作として良いものになるとは限りません。連作の「流れ」を作るために、他の人の句と自分の句を擦り合わせていく必要があります。その際には、句を削ることもあります。自分の句ならともかく他の人の句の場合、非常に心苦しいものがあります。今回この連作企画をしたことで、改めて高校生の皆さんには難しい課題にチャレンジしていただいている、と実感しました。 一方で、チーム連作にしかない魅力も多くあります。今回の A チームの共作の件から、その醍醐味が見て取れます。また、A チーム・B チームの作品の違いからも、各人の個性と各チ ームの個性が活かされる連作の面白さが分かります。苦労がある分、その作品が完成した時の喜びは一層増し、その喜びをチームで分かち合うことができます。 だから最後にこれだけは伝えておきたいのです。「チーム連作は面白い!!」